Dubstepトーーク!
GOTH-TRAD – 逆に質問なんだけど、どういう感覚なのかなと思って俺。
2006年2007年とかのDubstepの感覚ってあんまりわかんないよね?(笑)
(DUBNEEZのインタビュアーは全員20代前半なので)
DUBNEEZ – そうですね… 僕ら世代は過去のインタビュー記事とか動画をひたすら見漁って当時の知識を得るって感じですね(笑)
GOTH-TRAD – なるほどね〜。
俺は2006年にDubstepをしっかり認知してどっぷり浸かってたんだけど、あの当時はめちゃくちゃ面白かったんだよね。
例えば今だったらDubstepと言っても種類がいっぱいあるでしょ?
だけど当時のDubstepはなかったのよ。
すげえ激しくて、今だとBrostepみたいな分類に入るようなのもDubstepだし、すげえディープなのもDubstepだし、テッキーなのもDubstepだったし、ジャングルっぽいのもDubstepだったし。
要はDubstepの中のセクションがなかったんだ。
2009年か2010年ぐらいかな。Dungeon Sound と Brostep とかいうのが出てきてね。
Dungeon SoundはKryptic Mindってプロデューサーが作った、ダークなサウンドのサブジャンルみたいな感じで。
YoungstaとかJ:Kenzoとかもやってて、超ダークなやつが流行ったの。
Brostepはワブルベースを効かせたアッパーな感じので。
例えば16bitっているじゃん?16bitはBrostep寄りなのよ。(現在はMoody Good名義でソロ活動中)あとFuntcaseとか。
俺Funtcaseは当時から知っててよくやり取りしてたね。
その辺りから結構ね、ブロステップ派とダンジョン派 みたいな感じで割れ始めたんだけど、その直前ぐらいまでは結構ぐちゃぐちゃだったのね。
俺はもうすごいかけ離れた日本からシーンを見て、ツアーでイギリスに行ってみたいなスタイルだったから、「ダンジョンもブロステップもみんな似たような音楽作り始めてんなぁ」って思ってたタイプで(笑)
ただそこからBrostepがガーっと広まって、もうなんか「ああいうの大嫌い!」って感じで超ヘイトする奴もいたし、イケイケに行く方もいたしみたいな感じだったね(笑)
だけど別にやってる側って結構繋がってるんだよね。
やってること違うけど、昔は普通にダブとか交換してたし、同じパーティー出てたよねみたいな。
俺もCookie Monstaと一緒にやったパーティー出たりもしてたし、会っても「ワッサブロ!ダブ送るよ!」みたいな感じ。
それこそCaspaとかも超マイメンだし、今でもアメリカでフェスとかで会ったら「めちゃめちゃ久しぶり!」みたいな感じ。
サウンドの種類は違うかもしれないけど、やっぱもう歴史を生きてきたねみたいな感じはある(笑)
DUBNEEZ – 当時はそんな感じだったんですね!アーティスト間もちゃんと交流があって安心しました(笑)
でも似たようなのになってしまうとか、飽和状態みたいのは今の僕達も感じることはたまにありますね…
GOTH-TRAD – うんうん。でも何でも流行ればそうなっちゃうもんなんだよね。
流行ればみんなそれに乗っかりたいプロデューサーがいっぱいいて、そのチャンスを掴んだやつが、どんどんビッグになっていく訳だし。
それはDubstepにしても、ヒップホップでも何のジャンルでもそうだよね。
ただそれ俺は別にいいと思うんだよね。ビジネスとして上手く乗っかれてできる人と、できない人っていると思うんだ。
やっぱ自分のスタイルを保つかどうかってとこなんだよね。俺はディープなやつも好きだし、それを公言するのかしないのかっていうだけで。
「俺何でもかけんだぜっ!」ていうDJとはいえ、「俺はここも繋がってるし友達だし、あのプロデューサー昔から知り合いだけど俺はかけないよあいつの曲は」みたいな。それをスタイルとして見せられるかどうか。
何でも器用にできる人がかっこいいのか。それとも完全に「これっ!」てスタイルがある人の方がいいのかっていうだけで、みんな別に今はヘイトはしてない。
ただ自分のスタイルに合うか合わないかっていうジャッジをして、それに沿った活動をするかしないかだと思うんだよね。そこがブレるかブレないかの話で。
例えばセルアウトした音楽も作れんだけど、でも俺はそれ別に作りたい音楽じゃないから作らないとか。そこがスタイルだからね。
DUBNEEZ – なるほど。
最近だと、Hamdi等をきっかけに元来のUKスタイルのDubstepのリバイバルブームが少しずつ起き始めているんですけど、それについてはどのように感じていますか?
GOTH-TRAD – Hamdiは昨年マンチェスターで一緒に出てるんだけど、その時は俺あんまり知らなかったの。
多分今みたいにビッグじゃなかったのよ。たしかSkankaって曲がバズったんでしょ。
俺それがDubstepのまた面白い所だと思うんだよね。1曲バズってあんだけ爆発するって面白くない?
その前とか俺メールとか何回かやり取りしたことあって、ダブも送ってきたのかな。会ったらちょっと喋るみたいな。
DUBNEEZ – Hamdiとも面識あったんですね!
確かにあの曲でヒットして以降、日本の現場でもあの曲かかった時お客さんの反応も良くなりましたね。
GOTH-TRAD – 本当は違うんだよ。それは日本の反応なんだよね。
海外の反応はもうリリースされる1年前から爆発してたんだよ。リリース前のダブの時点で超流行んの。
それを出さないんだよ。 当時の話で言うと1年も2年も出さない。
ダブステップフォーラムとかでも「いつ出るんだあの曲」みたいな(笑)
出た瞬間爆発すんだよね。
Hamdiの場合はSkankaはリリース前の時点で、向こうでめちゃめちゃ流行ってたんだと思う。
ただ世界的には浸透してなかったけど、やっぱ出たらいろんなメディアにも載るしSNSにも載るしで、ツアーも回ってみたいな。
やっぱコアなファンがイベントやりたいから呼ぶじゃん。
それでバーンって広まったんだと思うよ。
Dubstepって基本的にそういうサイクルだし、貯めて貯めてバーンみたいな。
DUBNEEZ – そんな感じでDubstepのヒット曲って生まれるんですね!
現場に行かないと聴けないみたいなのも重要ですよね。
GOTH-TRAD – 現場で聴けるってのも大事だね。
基本的にダブを交換する時とかも、それなりのDJに渡すんだよね。
「あのダブ欲しいんだけどくれない?」みたいなのは「じゃお前もダブ同じぐらいやばいダブくれよ」みたいな(笑)その等価交換みたいなさ。バラ撒かないで、わざと5人のDJぐらいにしか渡さない。
本当にコイツは良いDJやってくれるから、コイツには渡すみたいな。
例えばさ、誰かがダブをいきなりバーンと送ってくんのよ。
もうよくあるのは20曲ぐらいバーと送って、
「これ自分のダブだから聴いて使ってほしい。だからあのダブ欲しいんだけど」って。
全部聴いてみたら全然良くないからあげないとかもあるし(笑)
でもそれも良い意味でモチベーションになるんだよね。
それで交換できるようなレベルを目指して、クオリティを上げてくっていう作業を、みんな地道にしてるんだよね。
DUBNEEZ – 確かに。そういうのもモチベーションになりますよね!
GOTH-TRAD – そうそう。俺はBack To Chillを始めた理由がもう1つあって。
プロデューサー同士での曲を作るって部分の交流が当時はなかったのね。
DJ同士で「あの曲ヤバいよね。あのアンダーグラウンドのヒップホップの新曲ヤバいよね」とかそういうのじゃなくて、
「自分らがクリエイトするものの事についてもっと詳しく話せばいいのに」って俺は思った。
「あのプラグインやばいよ!」とか「あのコンプ使ったらやばいよ!」とか。
日本人って秘密主義者が多いっていうか、そこまで話すのが無かったなと思って。
例えばBack To Chill終わった後に俺の家来て「これはこれのプラグインでこうやって、このワブルはシンセこれ使って」とか「このプラグインはヤバいから写メ取りなよ」とかって俺はもう全部見せるから(笑)
そうやってみんなカッコいい曲作ってくれたら、俺もかけれるじゃん。
Back To Chillのクルーの、アイツらのかっこいい曲かけるし。
プロデューサー同士の付き合いで、年齢とかも関係なくカッコいい曲作った奴はヤバいみたいに認めて。
先輩後輩の垣根とか無いね。
経験値の違いは出てくるかもしんないけど、曲を作るっていうとこに対しては、カッコいい曲作る奴にはカッコいいって言うし、ダメなもんはダメって言うし使わないしみたいな。
あいつらが「このベースはどうやって作ってるの?」って聞かれたら俺全部答えるし全部見せるし。
それでカッコいい曲を作れば、俺も使いたいしみたいな、そんな感じ。
DUBNEEZ – プロデューサー同士で曲作りを会ってするの良いですよね!
みんなで知識を共有してお互いを高め合うところ素敵です。
GOTH-TRAD – そうそう。イギリスのプロデューサーだってスタジオシェアしてたりするからさ。
そういうの当たり前に結構やってて。
ちゃんとプロデュースしたいっていう奴らは家で作業しないで、4人とかで大きい音出せる1部屋スタジオシェアしたりするのよ。そこでそれぞれ時間帯変えて交代で作ったりとか。
自分の家で作んないで、ちゃんと仕事として成り立つような。
イギリスとかって、DJって結構ちゃんと職業として目指すっていうか。
音楽学校でDJとしてプロになることを目指すっていう奴とかもいるって、結構俺話聞くから。
それで成立してる人も絶対数は日本よりも多いわけじゃん。みんな仕事行く感覚みたいな。
そういう意味ではスタンスがやっぱり日本とちょっと違うよね。
例えば20万だったら4人でシェアして1人5万ずつ、毎月スタジオシェアしようぜとか。
もっとプロフェッショナルになってきたら、自分で家とは別で1部屋借りて、仕事に行くみたいに朝9時から5時まではプロデュースするみたいなで、もう5時終わったら帰るみたいな。
DJというか、プロデューサーとしてのプロフェッショナルを目指すその教えって、イギリスではみんなやってるから、もう歴史として残ってるわけじゃん。
日本でそういう歴史を、例えば誰かが始めて、「曲作るんだったら別で音出せる部屋借りてやるの当たり前だよ」みたいなのやったら、30年後にはそれがスタンダードになってるかもしんないしっていう話だと思うよ。
ただ日本はあんまりそういう環境は作れないから難しいかもしれないけどさ。
イギリスって結構面白くて、ロンドンとかってトレンドの街がどんどん変わってくのよ。
流行りのトレンドの街になる前は、全然なんでもない街だったりするのね。
なんでオシャレな街になってくかと言うと、なんでもない安いエリアにアーティストが集まるのよ。
ただ安いっていう理由で(笑)
そこに音楽に限らず、アトリエだったりアートスタジオだったりとか、みんなそこで借りてやり始めるの。
そしたら、そこでカルチャーが生まれて、そこの近くにカフェができて、小さいライブハウスができて。
みたいな感じで、そこがいつの間にかトレンディーな街になって、また物価が高くなってアーティストが違うとこに集まってみたいな。
例えば俺が2005年くらいにイギリスに行ったときに、Dalstonっていうロンドンの北東部にある街の、友達の家に泊らしてもらってて。
当時は特に何も無くて、そんなにオシャレな街じゃなかったんだけど、もう10年以上経った今はNTSラジオが出来たり、クラブとかレコード屋とかオシャレなカフェも増えて、そうやってどんどんトレンディな街に変わっていくっていう。
そういうのって自然に出来ていくみたいよ。
もちろん街とかがサポートしてる部分もあるんだろうし。そんな感じだね。
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